大学生の留学は、学校側の用意したプログラムに参加するか、学校を休学して留学に行くかが一般的です。ただ大学の留学制度は、出願要件が定められていたり、定員が決められていたりするので、そこに当てはまらなければ休学して留学することになります。では休学して留学することにどんなメリット・デメリットがあるのかまとめてみました。
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休学とは、病気などのやむを得ない事情、あるいは大学が正当と認めた理由により長期間授業に出席することが困難な場合に、学校に籍を置いたまま休むことをいいます。日本で在籍している大学を休学して留学することは一般的に「休学留学」と言われており、協定留学(交換留学)や認定留学などと並ぶ、大学生の留学の方法のひとつです。大学を休学できる期間は大学によって異なりますが、2か月~1年が一般的です。
協定留学(交換留学)とは、通っている大学が海外の大学と締結した学生交流協定に基づき、協定を締結した大学に一定期間留学する制度のことです。認定留学とは、日本で通っている大学の学生交流協定を利用せず自分で留学先の大学を探し、日本の大学から承認を得た上で留学する制度のことです。
交換留学・認定留学と休学留学の違いは、留学にあたって日本の大学の承認が必要かどうかです。交換留学や認定留学は日本で通っている大学の承認を受けなければ行けませんが、休学留学は大学の承認が無くても行けます。
休学留学は大学の許可が必要ないので、交換留学や認定留学よりも留学プランを自由に組むことができます。帰国後に復学すれば、新卒として就職活動をすることができるのも特徴です。
交換留学制度を使って留学するには学内の選考に通過する必要があり、選考基準としてGPAや語学力を証明する試験のスコアが定められていることがあります。休学留学をする際は学内の選考を受ける必要がないため、通っている大学が定める交換留学の選考基準を満たしていなくても留学できます。
大学側の制度である交換留学や認定留学は、大学側で決められたプログラムに参加するのが一般的です。しかし休学留学は大学側の制度ではないため、留学先やプログラム選びが自由です。たとえば、「最初の数か月は語学学校で英語を勉強し、残りの期間で現地にある大学の授業を聴講する」「はじめは語学学校で英語を勉強し、残った期間はインターンシップ制度を利用して海外で働くことを経験してみる」などです。
帰国後に新卒として就職活動ができるのも休学留学のメリットです。マイナビが行った「2020年度既卒者の就職活動に関する調査」によれば、大学・大学院等を既に卒業している就職活動者の内定率は、新卒(現役学生)の就職活動者よりも低いという調査結果を出しています。また、「卒業後の就職活動において大変だと思うこと」として、「既卒者の募集が少ない」「既卒者としての活動の仕方が分からなかった」という回答が上位に来ています。
交換留学や認定留学より学費がかかりやすいのがデメリットです。文部科学省が運営するWebサイト「トビタテ! 留学JAPAN」では、交換留学にかかる費用は90~260万円(学費は免除、渡航費が10~20万円、滞在費は毎月5~15万円)とされており、追加でビザ取得費用や生活費、保険料が必要と解説されています。休学留学の場合、さらに休学費用もかかるので、90~260万円以上の費用がかかるものと考えておくのがいいでしょう。
【必要な学費】
・交換留学:日本で通っている大学の学費
・認定留学:日本で通っている大学の学費+留学先の学費
・休学留学:日本で通っている大学の学費+留学先の学費+休学費用(大学によって異なる)
※休学中に支払う費用は大学によって異なります
留学後に日本での就職を希望する場合は、大学1年~3年の2月(4年生になる年の2月)までに留学に行くのが良いでしょう。新卒の就職活動が解禁されるのは大学4年生になる年の3月なので、2月に帰国できれば同時期に就活する他の学生と同じ分の時間を確保できるからです。
実際、ベネッセ教育総合研究所が行なった調査によると、大学生が「留学を希望する時期」もしくは「留学をした時期」は、最も多いのが大学2年生で32.6%、次に多いのは大学3年生で30.3%という結果になっており、60%以上の人が大学4年生までの留学を希望・経験しています。
なお、海外企業の採用スケジュールは企業によって異なるため、留学後に日本での就職を考えていない場合は、留学に適したタイミングは一概には言えません。
日本学生支援機構(JASSO)は「語学学校への留学の場合は約半年前から」「大学・専門学校等への留学は1年半ぐらい前から」学校選びやビザの必要性の確認や申請手続き、滞在先の確保などの準備を始めることを推奨しています。
渡航前の準備は時間がかかることに加え、学校が始まる1年前くらいに出願を締め切る大学や奨学金があることなどがその理由です。
なお、休学留学の場合は、休学届の提出時期によって休学費用が変わる場合があるため、休学届の提出期限も早めに確認しておくと良いでしょう。
休学届の提出期限は、1年間もしくは前期のみ休学の場合だと5~6月末、後期のみの休学の場合だと11~12月末に設定されていることが多いですが、正確な情報については通っている大学に問い合わせてください。
休学留学をする場合、日本の大学を4年で卒業できません。大学では、卒業までに最低限在学しなければならない「修業年限」が4年と定められているからです。休学期間は在学期間として認められないため、大学を卒業するためには休学期間を除いて最低4年間大学に通わなければなりません。
また、休学留学での留学先で単位を取得しても、日本の大学の卒業要件を満たす単位としては認められないのが一般的です。そのため、休学留学をした場合は、留学先で取得した単位とは別に、卒業に必要な単位数を日本の大学で取得しなければ卒業できない点にも注意してください。
留学による休学や留学の成果が就職活動でどのように評価されるかは、各企業や採用担当者次第です。ただし、文部科学省が運営する「トビタテ! 留学JAPAN」が2017年に行った調査によれば、企業の採用担当者の75.3%が「留学するために留年や休学することは採用においてマイナス評価にならない」と回答しています。
さらに、採用担当者の80.4%が「留学経験が仕事で役に立つ」 、84.4%が「大学時代に留学した方がいい」と回答していることを踏まえると、留学の経験は評価される傾向があると言えるでしょう。